ハイジの故郷とエンガディンの美しい村々へ

ヨハンナ・シュピリ著「ハイジ」の故郷マイエンフェルト。リヒテンシュタインとオーストリアとの国境近くにある小さな村です。大河になる前のライン川沿いの町で、美しい葡萄畑が広がっています。チューリッヒから列車で乗り換え1回、1時間で到着します。

ライン川を挟んだ、隣町のバート・ラガーツのホテルに滞在するのも素敵ですし、チューリッヒからの日帰り旅行でもゆっくりお楽しみいただけると思います。

マイエンフェルトには、ハイジドルフ（ハイジの村）があり、誰でもハイジの物語の世界を楽しむことができます。

ハイジドルフ内には、ハイジの家を再現したハイジハウスや、ハイジの山小屋（ハイジヒュッテ）、ヨハンナ・シュピーリミュージアム、土産店、スイスで一番小さな郵便局などがございます。ハイジドルフは、3月15日～11月15日の毎日10時～17時に開館しています。

ハイジドルフの隣にはハイジホフという名のホテル・レストランがあり、ボリューム満点の地元の料理を楽しめますよ。また当地はマイエンフェルダーという白ワインの産地です。是非レストランでお試しください。テラス席からは、ハイジも愛したライン川を見下ろす広々とした景色が望めます。

アルプスの少女ハイジの原作は「Heidis Lehr und Wanderjahre」(ハイジの修行時代と遍歴時代)と「Heidi kann brauchen, was es gelernt hat」(ハイジは習ったことを使うことができる)です。作者ヨハンナ・シュピーリはゲーテを愛読していたので、ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」と「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」から着想を得たといわれています。

ハイジは、54カ国に翻訳され、映画12本、アニメ版は8つ、その他TVシリーズやミュージカルも多く作られ、スイスはもとより世界中の人々に現在も愛され続けています。

作者のヨハンナ・シュピーリについて少し紹介しますね。
1827年にチューリッヒ湖南の村ヒルツェル(Hirzel)にて医者の父と牧師の娘の母の元に7人兄弟の4番目として誕生。父親は農家出身で医者になり、医者がいなかった村で開業した徳のある人。母親は賛美歌の詩を書く詩人でした。母親の希望で娘達は教育者として生計をたてられるようチューリッヒでフランス語などを学びます。25歳の時、5歳年上の弁護士ベルンハルト・シュピーリと結婚しチューリッヒに新居を構えます。夫はスイス連邦新聞の編集者も務め、家には詩人ゴットフリート・ケラー (Gottfried Keller)、音楽家リヒャルト・ワーグナー (Richard Wagner)、哲学者のヤーコプ・ブルクハ ルト (Jacob Burckhardt) などが集っていたそうです。多忙で几帳面な夫とは夫婦仲がよくなかったと伝えられています。

チューリッヒの都会に住みながら、生まれ故郷の田舎に憧れ続けていたのかもしれませんね。彼女には1人息子がいましたが、生まれつき病弱で28歳の若さで亡くなっています。都会の子クララが病弱なのは、このことが理由でしょうか。1901年74才、自分の死期を感じた彼女は、個人的な原稿の断片やメモ等をすべて焼き捨てました。どんなに勧められても自伝は書かなかったという彼女の人柄が偲ばれます。
ハイジの物語の随処にキリスト教の教えが散りばめられています。また、医者の娘として、貧しい子供たちに接してきたのでしょう。ハイジに登場する子は貧しかったり、片親だったりしても、皆心の優しい子として描かれていますね。アルプスの景色も相まってハイジを世界的に愛される物語にした理由でしょう。

クールは、紀元前3000年頃から集落ができたスイス最古の町。クールに宿泊して、マイエンフェルトに日帰り遠足にでかけます。クールからマイエンフェルトは列車でほんの10分。

クールでは、絵本「ウルスリのすず」の画家アロイス・カリジェゆかりのホテル・シュテルンに宿泊。スイス人なら「ハイジ」と同様に誰でも子どもの頃から親しんでいる絵本です。カリジェの作品がホテルのあちこちに飾られている木のぬくもりに溢れた可愛らしいホテルです。

13世紀に、神秘的なタミーナ渓谷から湧き出る湯が発見され、フェファース修道院にひかれました。巡礼者を癒してきた歴史ある温泉地です。19世紀から高級ホテルが建設され、現在は世界中からの観光客を魅了しています。

ハイジの物語内でも高級温泉地として、ハイジの叔母デーテが働き、フランクフルトからのお金持ちと知り合った場所として描かれています。また、足の悪いクララも立ち寄りました。実際、作者ヨハンナ・シュピーリは病弱だった1人息子の療養のために訪問したそうです。

滞在ホテル内のスパや、最高級ホテルGrand ResortBad Ragazには、宿泊者以外も入れる公共のスパのタミナテルメ（Tamina Therme）がざいますので、ご利用されてみてはいかがでしょうか？

※写真はイメージです

アルプスの画家セガンティーが天国の入り口と称した最奥の村ソーリオ。人口150人。イタリアとの国境がすぐ近くです。作家ヘッセやリルケもその美しさに魅了され度々訪れたそう。眼下に広がるブルガレア渓谷と、雪を抱くシオラ山脈の素晴らしい景色を眺めることができます。石葺屋根の家々と迷路のような路地からなる小さな村を散策してくださいね。

鉄道は通っていないので、サンモリッツからバスでアクセス。1時間半で到着します。日帰り観光もできますが、ご宿泊ご希望でしたら、ソーリオはホテルも少ないので、お早めにお申し込みください。

エンガディン地方の村々で、3月1日に冬を追い出し、春を迎えるお祭り「チャランダマルツ」。村の男の子たちが大きな鈴を首から下げて、冬を追い出すために、鈴を鳴らしながら歩くお祭りです。そんなお祭りをする村の1つがウルスリのすずの舞台となったグアルダ。

こちらは、サン・モリッツからイン側の北東下流に位置。鉄道で1時間10分程。家々の壁を飾るスグラフィットの装飾画が美しく村全体が歴史博物館のようです。

サンモリッツからレーティシュ鉄道で約30分。スグラフィット装飾の家々が立ち並ぶびオーバーエンガディン地方の中で最も美しい村といわれるツォーツ。
小さな村の散策後は、中央広場に面する築500年のホテル・クルーシュ・アルプ（Hotel Crusch Alva）で、村1番の郷土料理を試したり、村で1軒の菓子店クララー（Klarer）で銘菓ヌストルテ（ナッツケーキ）を楽しんだりしてみてください。
ツォーツも3月1日にお祭りチャランダマルツが盛大に開かれます。

Photo©Alp Schaukaeserei Morteratsch

サンモリッツからレーティッシュ鉄道で30分。氷河の迫るモルテラッチには駅のすぐ近くに、伝統的なチーズ工房がございます。ハイジのおじいさんも作っていた古式のチーズ作りを見学し、森の中でランチを楽しんではいかがですか？夏季のみ営業。2023年は6月15日～10月1日