スイスの世界遺産1.ザンクトガレン修道院
バロック建築の傑作といわれるザンクトガレン修道院
始まりは612年、伝道の旅の途中で倒れたアイルランドの修道士ガルスが、この地に小さな庵を建て、彼の名からザンクト・ガレンと名付けられました。その後、720年に勤労奉仕を通じて神に献身するベネディクト会の修道院になり、聖書や古典の写本が盛んに行われました。全盛期は9~10世紀。ヨーロッパ中から優秀な人々が集まり、ザンクトガレンは芸術、文化、科学の研究の中心であったと言われています。豪華な修道院付属図書館は世界最大級の中世の図書館。約17万冊ある蔵書のほとんどが今でも読むことができる状態を保っています。
町全体を眺めるには、大聖堂の南側からケーブルカー(ミューレグバーン)で丘の上へ。公園が広がり、市民がのんびり過ごしています。大聖堂を中心に広がる旧市街が見渡せますよ。
ザンクト・ガレンは、チューリッヒから列車で東に1時間10分と近いので、旅の終わりにいかがでしょうか?
スイスの世界遺産2.ミュスタイアの聖ヨハネ・ベネディクト会修道院
8世紀フランク王国のカール大帝の命で建てられた修道院。スイス最東部、谷奥の村ミュスタイア。修道院から徒歩10分でイタリアとの国境になります。聖ヨハネ・ベネディクト会修道院では、現在も修道女達が祈り暮らしています。
教会内の東西南北すべての壁に描かれた聖書の82場面の壁画は9世紀の美しいフレスコ画。これは20世紀になり19世紀の壁画の下から発見されました。保存状態の極めて良好なカロリング様式の建造物であり、カール大帝時代の宗教施設であること、中世初期のフレスコ画の保存状態の良さなどから世界文化遺産に登録されました。
ミュスタイア村の人口は1500人。鉄道はなく、ツェルネッツ駅からバスで、スイスで唯一の国立公園内を走ること1時間強。サンモリッツからツェルネッツまで50分です。スイスの秘境ともいえる村にひっそりと建っています。
スイスの世界遺産3.ベルン旧市街
大きく湾曲するアーレ川に囲まれたベルン。
アルプスから注ぐ水は美しい緑色で、アーレ川沿いをのんびり歩いていくと、夏には泳いでいる人を見かけることもあります。ベルンの街は今から千年前に要塞都市として作られ、石造りの建物が多い街並みは、永世中立国スイスであるからこそ、中世の姿がそのまま残されています。
旧市街を歩くと、赤いカラフルな柱とその上に英雄や伝説上の人の像がいるものが立っているのに気がつきます。これはその昔、町人や馬の喉を潤す泉(Brunnen)で貴重な井戸として利用されていたそうです。
旧市街の端の高台にあるバラ公園へ是非訪れてみて下さい。美しい赤茶色の屋根が続き、町全体が世界遺産に登録されている由縁が分かります。
お時間があれば、ベルン市民の憩いのグルテン山に出掛けてください。山といっても標高864m。ベルン自体標高が540mありますから、ちょっとした丘ですね。ベルン駅からトラム9に乗り、グルテンバーン駅下車、かわいい登山列車に乗り最終駅下車です。歩いても30分で山頂へ到着。山頂に広がるグルテンパークには、アスレチック広場や遊歩道、素敵なレストランやカフェがありますよ。天気のいい日にはベルナーアルプスの眺望を楽しめます♪
スイスの世界遺産4.ベリンツォーナ3つの古城と街を囲む城壁
ローマ時代、2つの街道が交わり戦略上重要な役割を果たしたベリンツォーナ。ローマ時代から戦略上重要だったこの地には3つの古城が残っています。
「カステルグランデ、モンテベッロ、サッソ・コルバーロ」
ベリンツォーナにある3つの城と城塞は2000年に世界遺産に登録されました。最も大きく、最も古い城がベリンツォーナの中心にあるカステルグランデ。塔から町を一望できます。城内に素敵なレストランもあり、テラス席がおすすめです。
モンテ・ベッロ城はティチーノ地方で発掘された紀元前の発掘品を展示しています。
サッソ・コルバーロ城はモンテベッロ城の南、丘の中腹に建つ城。徒歩で急坂を上ると素晴らしい眺めが広がります。行きはタクシー帰りは徒歩もおすすめです。
3つの城と威厳ある要塞がアルプスの山々に囲まれて勇ましく聳える姿は圧巻。ベリンツォーナはチューリッヒからルガノ、ミラノ方面の列車で1時間40分です。
スイスの世界遺産5.ラヴォー地区の葡萄畑
きらめくレマン湖と葡萄畑が織りなすラ・ヴォー地区は千年以上続く長い歴史と変わらない伝統・景観の美しさが評価され、2007年、葡萄畑で唯一世界文化遺産に登録されました。
レマン湖岸の急峻な斜面に広がる葡萄畑と中世の町並み、レマン湖の向こうにそびえるフランス・アルプスは、素晴らしい景色です。抜群の眺望の美味しいレストランやワインの試飲場があり、葡萄畑の村々をつなぐ散策ルートも整備されているので、食事後の散策にぴったりです。詳しくはツアーカテゴリ大自然に抱かれる極上時間 花とハイキング内でご覧下さい。日本語ガイドと散策路を歩く、ワイン試飲付きの現地発日帰りツアーもございます。ご興味あればお問い合わせ下さいね。
ミニトレイン(電動自動車)も走っていますので、歩き疲れたら、ミニトレインに乗ってブドウ畑を巡ることもできます。(通常4月~10月までの運行)
スイスの世界遺産 6. レーティッシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線と周辺景観
アルプスを南北に縦断するベルニナ急行(ベルニナ・エクスプレス)!
クール/ダボス~サンモリッツ間を走るアルブラ線、サンモリッツ~イタリア領ティラーノ間を走るベルニナ線は、アルプスの数々の難所を貫いて走ります。
ベルニナ線は55のトンネルと196の橋を渡りティラーノへ行きます。車窓からの風景はグラウビュンデン州の険しい山々・深い渓谷、濃緑の針葉樹の風景からイタリアのカラフルな広葉樹に変化していきます。
ぐるっと円を描くように掛けられたブルーシオ橋や水色に映えるラーゴ・ビアンコなど、ベルニナ急行に乗って美しいパノラマ景色をお楽しみください。
スイスの世界遺産 7. 時計産業の町ラ・ショード・フォン
ラ・ショー・ド・フォンは町の建物が全て4から5階建ての南向き。19世紀、ジュネーブの時計職人達が移住してきて時計作りのために造った町です。地階が部品工場、中階が自宅、日中明るい上階が組立工房となっています。
無料の展望テラス・トゥール・エスパシーテから町を一望してみて下さい。また、ヨーロッパ最優秀博物館賞を受賞した国際時計博物館は、時計に興味がない人でも思わず見入ってしまうほど素晴らしいです!
ラ・ショー・ド・フォンへは、ベルンから鉄道で直通1時間。チューリッヒからビール(ビエンヌ)乗換えで2時間強です。
スイスの世界遺産 8.スイスアルプス ユングフラウ・アレッチ
2001年にアルプス初の世界遺産として登録されたユングフラウ - アレッチ - ビエッチホルン地域(Jungfrau-Aletsch-Bietschhorn)。アルプス最大・最長のアレッチ氷河は、全長24km、幅1.6km。ベルン州とヴァレー(ヴァリス)州にまたがっています。
氷河の始まりは、ヨーロッパ最高地点の鉄道駅ユングフラウヨッホ(3454m)のスフィンクス展望台からご覧頂けます。アレッチ氷河全体を眺めるには、ローヌ谷の村フィーシュからロープウェイで1回乗り継ぎ25分で上れるエッギスホルン展望台がお勧めです。
スイスの世界遺産 9. ル・コルビュジエの建築作品
レマン湖畔の家 Photo©Association Villa "Le Lac" Le Corbusier
近代建築の父といわれるル・コルビュジエ(Le Corbusier)、本名 シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ(Charles-Edouard Jeanneret 1887年~1965年)。スイスの時計産業の中心、ラ・ショード・フォンで腕時計の装飾職人の父と音楽の先生の母との間に生まれました。13歳で地元の装飾美術学校に入学。在学中に校長の勧めで建築家とともに、家を建てたことで建築に目覚めます。ちなみに、名前ル・コルビュジエは、パリで前衛芸術家達と創刊した雑誌「レスプリ・ヌヴォー(L'ESPRIT NOUVEAU)」に寄稿した際のペンネームで、母方の曽々祖父の名前をとったそうです。
20歳で生まれ故郷のラ・ショー・ド・フォンからパリに移住します。彼の作品は世界各国にありますが、その中からフランス、スイス、日本(国立西洋美術館)、ベルギー、ドイツ、アルゼンチン、インド7カ国にある17の建物が、2016年世界遺産に登録されました。
スイスで見学できる世界遺産に登録された作品はレマン湖畔の通称小さな家、「ヴィラ・ル・ラク(湖の家)Villa «Le Lac»とジュネーブのイムーブル・クラルテ(Immeuble Clarté)です。
レマン湖畔の小さな家(Petite villa au bord du lac Léman)は、年をとった両親のために、標高1000mのラ・ショー・ド・フォンより温暖な気候のレマン湖畔ヴヴェイ郊外コルソーCorseauxに建てた小さな家(1923年)。1924年に両親は、ラ・ショー・ド・フォンのメゾン・ブランシュから移住。父親は1年間のみの居住でしたが、母親は1959年、100歳まで暮らしました。この家はレマン湖から窓までわずか4メートル。横長の大型窓からは、美しい湖とその向こう広がるアルプスの情景が望めます。また庭の石壁の小窓からも、絵画のようにレマン湖をみることができます。長さ20m、幅3mと小さな家ですが、作り付けの家具、天井や窓からの採光、家具をパーテーションにも活用できる機能的なレイアウト、屋上の緑など、老齢の両親が快適に暮らせるように考えられた個人住宅の傑作です。
住所:Route de Lavaux 21, 1802 Corseaux ヴヴェイ駅から徒歩20分。
開館 土日の14時~17時
ジュネーブのイムーブル・クラルテ(Immeuble Clarté)は、1930年から32年に彼が初めて手がけた集合住宅です。現在も住居として使用されているので、外部のみの見学となります。この建物ではガラスを多用し、48部屋(8階建てで各階8部屋)全てに光が行き渡るように工夫し、明るく機能的な空間を創り出しました。90年も前の集合住宅ですが、とっても現代的です。
Rue Saint-Laurent2-4, 1207 ジュネーブ ジュネーブ市内、自然史博物館近くです。
その他スイスにあるコルビュジエ作品はチューリッヒと故郷のラ・ショー・ド・フォンでご覧いただけます。
チューリッヒ湖畔にある「ル・コルビュジエ・パヴィリオン」。近年改装工事のため休館していましたが、2019年5月20日に再オープン!この建物はル・コルビュジエの家具を商品化した女友達ハイディ・ウェーバーのために設計した彼の最後の作品。スチール(鉄骨)とガラス、カラフルなエナメルプレートを使用して作った家。チューリヒホルン公園の広大な緑に囲まれた敷地内にあり、とても気持ちがいいので、是非お出かけ下さい。
「ル・コルビュジエ・パヴィリオン」Pavillon Le Corbusier
夏期のみ開館 2019年5月11日〜11月17日 火曜〜日曜 12時〜18時(木曜は12時~20時まで)
住所:Höschgasse 8, 8008 Zürich
アクセス:チューリッヒ中央駅からトラム4で10分、バス停Höschgasse下車、その後、徒歩5分。
故郷のラ・ショー・ド・フォンで両親のために建てた家(ジャンヌレ邸=メゾン・ブランシュ=白い家)をご紹介します。この家は1912年、25歳のコルビュジエが独立して初めて手がけた家で、 後に建築業界を揺さぶる彼の様式の萌芽が随所に見られると言われています。行き方は、ラ・ショー・ド・フォン駅から203番か210番のバスでバス停Bois du Petit-Chateuで下車後、徒歩10分。道にはMaison Blanche(白い家)と書かれた標識が立っているので、分かりやすいと思います。ラ・ショー・ド・フォンでは、Maison Blanche以外も、20代に彼が手がけた家5軒、内部見学はできませんが外側から見られます。
「メゾン・ブランシュ」la Maison blanche 開館 金土日の10時~17時